COLUMN

大規模修繕工事の経費計上が可能となる制度誕生

これまで賃貸住宅を所有するオーナーが経費計上できなかった大規模修繕の積立金。それを実現する制度「賃貸住宅修繕共済」が誕生しました。

同共済は全国賃貸住宅修繕共済協同組合(東京都中央区)が提供し、将来に備えて長期修繕計画を立てて共済期間、掛金を拠出し、大規模修繕工事の費用に備えようというものです。中小企業等協同組合法に基づき設立された制度になります。

不動産業界団体の全国賃貸管理ビジネス協会(同;以下、全管協)、(公財)全国賃貸住宅経営者協会連合会(同千代田区;以下、ちんたい協会)が協力し、自由民主党の賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)に働きかけを行ったことで、2021年11月、国交省の認可が下りました。

修繕できる箇所は現時点で外壁、軒裏、屋根。火災や落雷による劣化にも活用することができます。加入には、劣化状況の検査が必要で、劣化現象がすでに起きている場合、加入することはできません。

対象物件は、木造・軽量鉄骨造の場合、築30年以内。RC造の場合、築40年以内。いずれも加入時の築年数。戸建てを含む賃貸住宅および、テナントが入る賃貸住宅(※住宅全体の延床面積のうち、店舗部分の床面積が50%以下の建物)。

共済期間は10年以上50年以内。掛け捨て商品のため、返戻金や満期金はなありません。売却などでオーナーチェンジをした場合、契約の権利や義務を移転することができます。また、死亡による共済契約者が変更された場合、法定相続人に権利、義務が移転。相続税の評価は対象外となります。

代理店登録した管理会社のみ提供できる

全管協あるいは、ちんたい協会に加盟し、代理店登録をした管理会社のみがオーナーに提供できます。一方、オーナーは、代理店となっている管理会社に管理委託する必要があります。共済利用時に組合加入をし、掛け金を支払うことで全額必要経費として計上することができます。

さらに、修繕会社は代理店が指定した業者で行わなければなりません。その際、共済金はオーナーに支払われるのではなく、施工会社に直接支払われる仕組みとなっています。

「賃貸住宅修繕共済」の概要

認可取得:2021年10月(国土交通省)

組合加入対象:個人・法人

計理処理:掛金は全額損金(経費)に計上

契約期間:10年~50年(更新型)

共済対象(築年数):

└・木造(軽量鉄骨造) 築30年以内

└・上記以外(RC造等) 築40年以内

対象となる物件:賃貸住宅(戸建ても含む)、賃貸に供している店舗等併用住宅

対象修繕箇所:屋根、外壁、軒裏

加入経路:代理店(全管協もしくはちんたい協会に加盟している不動産会社で、同共済の代理店登録した会社のみ)がオーナーへ提供可能

工事会社:代理店が指定した施工会社に限る

 

加入の流れ:

代理店が屋根・軒裏・外壁にひび割れやシーリング材の破断などをチェックリストに基づいて検査を実施

いつ、どんな修繕を行うか費用想定を含めた長期修繕計画を策定する

共済掛金を決定し、加入申込書を提出する

指定口座から掛け金を振り替える

 

同共済はあくまで、長期的に修繕計画を立てて建物を維持しようというものです。そのため、築2~3年あるいは、一度大規模修繕を完了した物件を対象としています。

  • 加入するメリット(※同組合のパンフレット参照)

1.大規模修繕を計画的に備えることができる

2.共済掛金を必要経費に

3.天災による劣化にも活用

4.相続、事業継承にも有効

5.長期修繕計画の実施物件として入居率に貢献

6.資産価値の維持

  • 注意事項や留意点(※同組合のパンフレット参照)

・対象物件に劣化が生じている場合、修繕しなければ共済に加入できない

・共済期間の初日から毎年、建物検査を受けなければならない

・共済対象は、外壁・軒裏・屋根

・グレードアップは含まれない

・加入にあたり、長期修繕計画書の提出が必要

・契約は代理店(全管協もしくはちんたい協会に加盟している不動産会社で、同共済の代理店登録した会社のみ)がオーナーへ提供可能

・修繕工事は代理店が指定する業者となる

・共済金は施工会社に直接支払われる

・掛け捨て商品で積み立てを目的とするものではない

・期中での解約、満期を迎えても返戻はない

・組合加入(出資金1000円以上)必要

・決済サービス手数料として口座振替1回あたり200円負担あり

・払込済共済掛金の総額からシステム利用料等として事業費を控除する

組合では、補償対象の修繕箇所拡大など国に求めており、汎用性が広がる可能性があります。続報があればコラムで告知していきます。

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